これまで日本の離島における廃棄物問題として、廃家電・廃自動車を題材に考察を行ってきたが、豊島事件のような僅かな例外を除いて、ほとんどの離島の住民は廃棄物問題に関して、必ずしも「困っている」状態ではないと考えてきた。しかし、ダイオキシン規制の強化に伴う焼却施設の高度化への対応、各種リサイクル法への対応、離島への観光客の増加等の要因により、少なくとも離島の行政当局は、廃棄物処理インフラの整備に一定のコストをかけざるを得なくなってきた。そのような背景で、離島の住民(一口に言っても様々な階層やアクターが存在するであろう)、関係業者、中央政府、観光客などにとって、何が「問題」として意識され、それをどのように克服しようとしているのかを個別具体的に検討することによって、この問題に関する離島の特殊性を明らかにできると考える。それは日本のみならず諸外国との比較によって、さらに充実したものとなると確信している。 以上の問題意識の下、基本文献の収集・現地調査(日本の場合、佐賀県唐津市の小規模離島、鹿児島県・沖縄県の離島、韓国の鬱陵島、台湾の金門島、フィジー諸島)を行った。また、日本の自動車リサイクル法の離島支援事業について背景と概要、進捗状況を調査した。これらめ調査を進める中で、近年注目すべき問題として「漂着ごみ問題」が地元ではとくに深刻であると認識されていることがわかった。海はいまや世界のごみ箱と化しつつあり、大海原を漂流したごみは島国である日本各地の海岸に大量に漂着し、美しい景観を悪化させるのみならず、様々なリスクや被害を惹起している。近年はペットボトルや漁具・発泡スチロールなどのプラスチックごみのほかにも、注射針を含む医療廃棄物、巨大な流木なども漂着してきている。こられの発生元は日本のみならず、韓国や中国であることが想定されることがわかった。
|