平成18年度、19年度に引き続き、日本・アジア太平洋の島嶼国家における廃葉物問題としてとくに使用済自動車の諸問題に関する各国の対応を中心に考察を行った。放棄車両問題が顕在化した1つの舞台が、いわゆる離島地域であった。そして離島における自動車リサイクルが市場において進むのは、基本的に自動車の多くの素材として構成していて、その相場が古くから国際的に連動している「鉄スクラップ価格」に最も左右されること、そしてそのことは国内外共通であることが判明した。2005年から開始された日本の自動車リサイクル法による「市場」を活用した「拡大生産者責任システムを前い。しかしその一方で、「離島」地域独自の創意工夫や、その島々に適合したリサイクルシステムを育むものとして、このシステムが果たして適当かという点に関して若干の疑問が生じる。そこで本研究では台湾や太平洋島嶼国の離島における「伝統文化」の崩壊・展開と関連付けながら検討を進めた。とくに太平洋島嶼国の伝統的な文化は、西洋文化・キリスト教文化を相当部分受けいれてしまった結果、海外諸国からの「補助依存」のものに変容した側面のあることは、極めて重視すべき論点であろう.離島地域でのモータリゼーションの進展が、伝統的な散歩とそれを通じたコミュニティの交流という文化を崩壊させ、慢性的な運動不足による肥満問題の顕在化などの「負の側面」を持つことは、その一例である。なお、「漂着ゴミ」問題に関する各国の対応や国際協力に関しても現地調査資料収集に努めたが、公表できる成果としてまとめるに至っていない。
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