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2008 年度 実績報告書

スペイン・バスク地方における言語空間の研究と言語の地理学構築の試み

研究課題

研究課題/領域番号 18520610
研究機関共立女子大学

研究代表者

石井 久生  共立女子大学, 国際学部, 准教授 (70272127)

キーワード文化地理学 / バスク地方 / 言語空間 / 領域性
研究概要

本年度は,研究期間最終年度であるため,バスク地方を舞台とした言語の地理学の総括的研究成果をまとめることに努めた。これまで2年間に及ぶ調査に加え,2008年9月にスペイン・バスク自治州ならびにナバラ自治州において現地調査を実施し,従来の調査で不足していた情報を補足した。
「言語の地理学」という方法論を確立するために,地理学がこのテーマにどのように貢献できるかを多方面から検証してきた。その結果到達したのが,現代の地理学にとっては,Geolinguisticsのような言語現象の空間分布分析よりも,話者集団におけるアイデンティティの生成過程とアイデンティティと空間の相互作用の分析のほうが重要な研究テーマとなるという問題意識である。従来の研究では,ナショナリズムにより生成される領域性の本質が軽視され,領域はネイションの自己認識の表象という立場がとられてきた。しかし近年,領域,境界,アイデンティティの動態的相互関係が注目されるようになりつつあり,それこそが地理学がこの分野で貢献できるテーマとなりうる。言語共同体のアイデンティティは,その外部の話者集団の存在により自覚され,強化される。その際,話者集団が使用する言語と彼らが集住する領域は,自他を区別するためのイコンとなり,その結果空間は集団的アイデンティティのシンボルとしての地位を獲得する。領域の実体化にともない,共同体構成員は領域の中で交流するようになり,領域への帰属意識をさらに高め,同時に空間は構成員の結束を促し,集団のシンボルや経験から共通の物語を生産するようになる。このように,アイデンティティと領域に関わる主体の相互作用の検証は,バスクのような固有の言語話者集団共同体を研究する際は重要な手続きとなる。バスクの再領域化過程におけるアイデンティティと空間の相互作用というテーマは,今後の重要な研究課題となろう。

  • 研究成果

    (2件)

すべて 2009 2008

すべて 雑誌論文 (1件) 学会発表 (1件)

  • [雑誌論文] バスク自治州のバスク語成人教育にみる領域、境界、アイデンティティの諸相2009

    • 著者名/発表者名
      石井久生
    • 雑誌名

      共立国際研究 26号

      ページ: 53-73

  • [学会発表] エスニシティと言語-バスクの事例-2008

    • 著者名/発表者名
      石井久生
    • 学会等名
      日本地理学会エスニック地理学研究グループ
    • 発表場所
      岩手大学
    • 年月日
      2008-10-05

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公開日: 2010-06-11   更新日: 2016-04-21  

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