グローバリゼーションの進展とともに社会的経済的・空間的な都市内二極分解が激化している、とドイツの各レベルの政府は認識している。困難な状況にある街区は産業化時代に都市化した都心周縁部か、または郊外的の大規模住宅団地のいずれかである。この問題を克服するためにEU、ドイツ連邦共和国、これを構成する州、そして都市自治体というさまざまなレベルの政府が協力して政策を実施している。本年度は、その典型例としてのドルトムントとデュースブルク、ならびに1970年代の都心周縁部が類似の問題を抱えていたミュンヘンでなぜ問題が深刻化しなかったのか、この3つの事例に関する現地調査を行うとともに、その成果を学会発表し、かつドルトムントについては3本の論文にまとめた。 ミュンヘンでは、再開発アクターとしてのミュンヘン都市再生有限会社による慎重な再開発が功を奏したといえる。その手法は、ベルリンのクロイツベルクでの再開発計画に伴う著しいコンフリクト・失敗から学んだ結果でもある。ただしミュンヘンにも社会的排除の顕著な街区が郊外にある。1950〜60年代にかけて成立した街区イメージと、1990年代に進行した移民の流入とが相乗的に作用してスパイラル的劣化という印象を強化した。しかし、ここでもプロテスタント系の社会福祉団体の活動によって、社会的排除はやわらげられている。 ドルトムントでは都心周縁部での貧困が1990年代から21世紀にかけて激化したとは必ずしも言えないが、例えば移民人口の増加によってそのイメージが強化された。この地区の再生政策は、ローカル経済の再建、建造環境の改善、住民のエンパワメントの3つの柱からなる。このうち、第2と第3の事業は顕著な成果を収めた。特に街区マネジメントというコーディネータの活動が成果を挙げた。しかし、ドルトムントと同じような性格の街区を持つデュースブルクでは、成功の度合いが弱い。
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