バンクーバー市文書館(Vancouver City Archives)には、水産缶詰会社が缶詰工場ごとに調査・作成したReturns(報告書)が所蔵されている。それによれば、BC州南部にあるフィニキス・キャナリーには一定数の白人が従事するが、工場での缶詰め作業を中国人、漁船での漁獲を日本人が補完的労働力として担っている。それに対し、BC州最北部のアランデール・キャナリーでは、一部の白人が工場での重要な業種に就き、原住民のインディアンが主要な労働力となるものの、中国人と日本人が同様の補完的労働力になっている。この相違は、BC州最大の都市・バンクーバーに近接するフィニキス・キャナリーが、アジア系移民を比較的容易に取り込んでいることを示している。ほぼ同数の従事者数にも関わらず、その製造量が3倍も異なる点についても、市場の存在とその近接性に要因が求められよう。 アランデール・キャナリーについては、北太平洋漁業史博物館(North Pacific Historic Fishing Village)に所蔵されたDebit(個人別帳簿)から漁業者ごとの魚種別漁獲量が判明する。主要な魚種はサカイ種で、その最盛期は7月から8月であり、ほぼ1カ月後にはピンク種の漁獲が多くなる。ただし、それらの漁獲高には個人差がみとめられる。たとえば、和歌山県日高郡比井崎出身の清水直七が745尾のサカイ種を漁獲しているのに対し、鳥取県出身の西村熊太郎は、その半分にも満たない。彼らのピンク種の漁獲数はほぼ同数であるが、キャナリーでの買取が最も高価な魚種はサカイ種であるため、両者の収入には大きな差が生じている。
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