日系(日本人)漁民の活動は、20世紀前半におけるカナダ西岸の漁業・水産加工業界では決して等閑視できない。イギリス系カナダ人が経営するサケ缶詰製造業は、原料となるサケを漁獲する優秀な漁民と、それを加工するサケ缶詰工場(キャナリー)での多くの従業員が必要であった。そして、ネイティブ・インディアンや中国系、やがてフィリピン系移民など、さまざまな民族との共同、あるいは反発のなかで日系漁民は活躍していたのである。しかし、これらの他民族との協業、あるいは分業体制をふまえて当時のカナダ漁業界を捉え、そこでの日系漁民の活動を検討することは、資料的制約という安易な理由のもと、地理学だけでなく隣接諸科学においても看過されてきたのである。 そこで本研究では、20世紀前半のカナダ西岸におけるサケ缶詰産業について、他民族と比較検討することから、新たな日系漁民史を構築すること目的とする。
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