1.平成17年12月10日、東京外国語大学で開催された特定領域科研『資源人類学』の国際シンポジウムにおいて、水資源をめぐって異民族が発達させてきた共同関係を報告した。 2.平成17年8月9日から9月26日まで現地調査をおこなった。現地調査は当初、エチオピアにおいて実施する計画であったが、6月に勃発したエチオピア南部の民族紛争が原因で調査対象のガブラ・ミゴは避難民となり、ケニアとの国境の町モヤレに集結していた。これにより、当初予定していた生態資源の定量的調査は不可能となったが、この紛争は、本研究課題にとってきわめて重要な事例となることが期待された。そこで調査地を変更し、ケニア国側のモヤレ町を拠点に、越境してきたガブラ・ミゴを対象に以下の3点について調査を実施した。 (1)紛争の発端から沈静化されるまでの過程を聞き取り調査によってあきらかにした。聞き取りに際しては、とくに紛争を扇動し主導した人物と、そのレトリックに焦点をあて、人びとを紛争に駆り立てていく過程に注意をはらった。さらにこの紛争が国内、国際政治とどのような関係にあるのかを検討した。 (2)稀少とされた生態資源のそれまでの利用状況と、および難民として移動した場所における生態資源へのアクセスについての聞き取り調査をおこなった。 (3)紛争で逃亡してきた者たちの名簿を作成し、この突発的な紛争にたいして個々の家族集団がどのように対応したのかを聞き取り調査によって明らかにした。とくに、牧畜民は家畜を放牧キャンプに分散させるなどして乾燥した環境に適応してきたが、この適応戦略が民族紛争というカタストロフィにたいして、どのように活用されているかを明らかにした。
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