研究課題
I.学会発表等1. 平成20年7月、ノルウェーで開催された第16回国際エチオピア学会において、稀少資源をめぐる異民族の共有システムについて発表した。2. 平成20年7月、滋賀県立大学で開催された第2回人類学関連学会協議会合同シンポジウムにおいて、稀少資源をめぐる競合ドグマについて報告した。II.平成20年8月12日から9月21日まで現地調査をおこなった。調査は、調査対象である牧畜民ガブラが避難民生活をおくっているモヤレ地域と、帰還してきた人びとが暮らすヤベロ地域を中心におこなった。調査項目としては、(1)紛争前夜の生態資源の利用状況や、(2)誰が稀少性を煽ったのか、(3)どのようにしてその言説が受け入れられていったのか、(4)紛争はどのように始まり、どのように終わったのか、(5)中立のガブラがどのように紛争に巻き込まれていったのか、(6)紛争後の生態資源の利用状況、などを中心にインタビューした。また、この紛争に際して、ガブラの人びとは家族を分割して危機を乗り切ってきたことが明らかになってきた。モヤレ地域とヤベロ地域での聞き取りの結果から、老人や女性・子供をモヤレ地域の避難民キャンプに住まわせる一方、壮年の男女や青年たちは、紛争当事者であるボラナ民族とグジ民族の境界付近に移動して放牧生活をおくっていたことが明らかになってきた。そこで避難民が帰属する家族メンバーの名簿を作成し、人びとの空間的配置を把握した。以上の調査から、大規模な避難民が発生する状況に於いても、家畜は紛争地域のなかで放牧されており、「稀少資源をめぐる競合」の実体が、稀少な自然資源をめぐるものではなく、むしろ政治的資源をめぐる競合であることが明らかになってきた。
すべて 2007 その他
すべて 雑誌論文 (1件) 学会発表 (2件) 図書 (2件)
Mobility, Flexibility, and Potential of Nomadic Pastoralism in Eurasia and Africa., ASAFAS, Kyoto University 007