平成20年度は、上記の研究テーマについて主として次のような課題をめぐって研究活動を行った。 1.社会主義革命時代における政治制度的、イデオロギー的基盤が形成されると思われる1950年代の「政治戦線思想戦線の闘争」、特に「反胡風反革命集団」運動と反右派闘争を分析し、そこに現れたイデオロギーの根本を成しているプロレタリア独裁、階級闘争史観、人民などの言説を分析した。 2.政治運動おける共産党の宣伝工作、「中央文件」、批判大会、密告と摘発、自己批判などの、「大衆運動」の政治手法を分析する一方、批判の的となった知識人や学者の理論と視点を分析し、その両者の対立点を検討した。 3.1950年代における様々な政治運動を経て1960年代は、毛沢東思想を学ぶ模範人物を樹立するというような政治工作が顕著となった。模範人物の役割は、一般大衆に手本を提供することのみではなく、社会主義イデオロギーや階級闘争における革命と反革命、社会主義と資本主義、プロレタリアとブルジョア、前進と後退、赤と黒などの二元対立の中に、正当化された一元として、別の一元を排除する強力な道具となったことを検討した。 上記課題をめぐる研究は、関連する先行研究や当事者の回想録、伝記を分析する以外、「人民日報」や「紅旗」などの中国共産党中央の機関誌を主な研究材料とした。今年度の研究成果により、平成21年度の課題がより明確となった。
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