研究の意義と重要性 本研究は、これまで充分な実態研究がなされぬまま、政府や国際機関による農村開発の援助対象とされてきたマダガスカルの野蚕・家蚕シルク生産を対象とした初めての経済人類学的研究として大きな意義がある。本年度の現地調査では、とくにマダガスカルにおける伝統的なシルク生産と野蚕資源管理の歴史と現状、国家主導の農業振興政策、観光化、森林の乱開発が引き起こした環境破壊などによる生産現場の危機的状況の実態とともに、糸と繭の流通システム上の諸問題が明らかになった。研究成果は、これからのマダガスカルの伝統的シルク産業の持続可能な発展に向けた援助活動の策定に寄与することができる。 研究実績の具体的な内容 (1)関連文献資料の収集と調査資料リストのデータ・ベース化作業 (2)マダガスカルにおける現地調査(平成20年8月29日〜9月13日) (1) 文献資料の収集:アカデミー・マルガッシュ、統計局、CITEなどにおいて、歴代政権の養蚕政策と野蚕資源保護政策等に関する文書資料を収集。 (2) 北西地方でのフィールド調査:とくにPort Berge地域を中心に観光化と環境保護問題について、Manpikony地域で森林保全と野蚕資源管理についてフィールド調査を実施。 (3) 中央高地でのフィールド調査:とくにArivonimamo、Anvoidava地域を中心に経済・政治・自然環境の変化が野蚕・家蚕の需要と供給にもたらした影響について調査を実施。 (3)研究成果の発表 本研究の一環として調査研究してきたマダガスカルの野蚕種の多様性と野蚕資源保護の現状について、6月の日本野蚕学会で報告。当該科学研究費補助金による研究成果の社会的還元のため、平成21年1月31日〜2月1日に京都「錦鱗館」にて収集資料の展示とワークショップ「マダガスカルと京都の染織コラボレーション」を実施。研究成果の一部を、京都文教大学人間学部紀要に掲載。
|