研究概要 |
本年度も,昨年度同様,研究チーム員による研究会を開催し,そこでの活動を中心に考察を進めてきた.また今年度は,代表者が参加している他のプロジェクトとの合同研究会も開催し,幅広い新しい視点(日本古典文学,中国文学)からの文献学理論の見直しもおこった.こうした理論的検討の成果は,平成17年12月に京都大学でおこなわれたCOEシンポジウムで,代表者が発表した.以上のような進展以外に,今年度の研究には,当初予想にはなかったスピンオフを生む新しい展開もあった.すでに昨年度の議論の過程で,理論面のみならず実践面からの検討の必要性を認識していた代表者は,4月に入るとすぐに計画を若干変更し,ある実験をおこなった.それは,他のプロジェクトで開発中の類似したコンセプトをもつデータベースシステムに,紙のカフカ全集を元に暫定的に作成したデジタルデータを載せて,研究用資料としてのデジタルデータのありようを探るというものである.この実験は,途中までは順調に進みその過程を5月末には情報処理学会の研究会で発表することもできたが,結局は一見類似しているようにみえたシステムの論理設計が実際には大きく相違しているのが判明して,目標の達成には至らなかった.しかし,この経緯から,実践的探求の有用性を再認識した代表者は,単独で,新たに一から独自のシステムの設計に着手,この取り組みは,9月には,学外の有能なプログラマの助けも得られて,目標である理論的モデリングに基づくデータ構造の発見に成功,そして10月に本研究のスピンオフ作品といえる文学研究用データベースシステムのプロトタイプを製作した.
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