連邦の制定法による内部告発者保護は、連邦の各種の個別法と一般法に大別される。前者には、大気浄化法、水質浄化法に代表される各種環境保護立法、雇用の場における人種差別・性差別その他の差別を禁止しアメリカ社会を大きく変えた市民的権利に関する法律(Civil Rights Act)第七編に代表される市民的権利関連(=諸種の差別禁止法)の法律、原子力利用関係諸法など様々な種類の法律がある。これらの個別法における内部告発者保護は、法律やその下で定められた行政機関の規則等に違反した違法行為を発見した者が、これを人に知らせることや、調査への協力、調査手続の中での証言など、法実現のために協力した者に対して、そのことを理由として雇用上の不利益を与えることを禁ずるという形で定められている。これらの保護は、内部告発者が私企業に務める労働者であろうと連邦政府の公務員等であろうと、その身分に関係なく適用される。手続的には、上述したような活動によって不利益を被った者は、労働長官に訴え出て、調査保護を受けるという定めがなされている例が多い。このような個別法とは別に、連邦政府の活動全般に関して、連邦公務員による告発を保護する一般法も存在する。その先駆けとなったのは、1912年に立法されたロイド=ラファレット法であった。今日の保護法制の中心は、連邦公務員制度改革が行われた際定められた連邦公務員制度改革法(Civil Service Reform Act of 1978)と、その後、内部告発保護に関して不十分さが問題となり、その部分につき同法の一部改正を目的として定められた通称内部告発者保護法(Whistleblower Protection Act of 1989)である。連邦の公務員が、自らが勤める連邦政府の活動につき、各種法令違背、公金の重大な浪費、重大な権限濫用、重大なミスマネージメント、公共の健康および安全に対する具体的かつ実質的な危険が存在すると合理的に信じ、これを部外に開示した場合の保護が定められている。
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