この研究の目的は、司法書士が簡裁代理権を行使する/しないことを規定する要因を明らかにすると共に、そのことが市民による法使用に与える影響を、簡裁代理権を行使している司法書士や紛争関係者への面接調査、その他の手法を用いることで明らかにすることであった。 昨年度に引き続き、簡裁代理権を行使している司法書士や、紛争経験者のうち司法書士を代理人として利用した市民を対象として面接調査を行った。その過程で、もめ事の処理がどのようになされるかには、最初に誰に相談したかが大きな影響力を持っていることも明らかになった。具体的には、弁護士や司法書士を始めとする法律専門家に相談した場合には、さらに別の法律専門家に尋ねるなど、法の主題化が図られるのに対し、最初に行政機関に相談した場合や民間機関に相談した場合には、法の主題化が図られにくいということであった。これについては、日本法社会学会学術大会(神戸大学)、国際法社会学会(ミラノ大学)にて報告を行った。 また司法書士において簡裁代理権を行使することについては、クレサラ問題で過払い金の返還請求などのケースにおいて見られた。これは、ケース数が多いことに加え、法律関係が比較的単純であることも影響していると思われることが明らかになった。
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