研究概要 |
平成18年度の研究進捗状況の総括: 初年度である平成18年度は,医療事故紛争の領域におけるADRの可能性について、「ミクロな観点からの紛争当事者の認知と実践の研究」と「マクロな医療紛争処理・安全推進制度の機能分析」という研究目的に即して,以下の研究調査計画に従って研究を進めた. 1.医療事故当事者への「被害」と「責任」についての医療者側(医師と看護師)と患者側の認識の相違を探るために、インタビュー調査(係争中事例1例含む)を行った。具体的には名古屋高裁のある事例の医療事故被害者家族と,医師と看護師の数名を実施した. 2.海外医療紛争処理システムの文献研究のためにペンシルバニア州における不法行為改革,NY州のADR制度,フロリダ州におけるADR規制の検討などを中心に行った. 3.海外調査では、NY州のトゥーロ大学法学部のハル・アブラムソン教授と,カゾーゾ・ロー・スクールのリーラ・ラブ教授,医療ADRの医療の質・安全に運用成果が著しいメリーランド州ジョンズ・ホプキンス病院訟務部のローリー・バラッカ弁護士とマーガレット・ギャルソン患者安全部顧問にインタビュー調査及び資料収集調査を実施した. 4.法社会学的観点から「対話による医療紛争交渉スキル」プログラムの有効性と習得性調査において、財団法人医療機能評価機構の認定病院の医療安全に関わるリスクマネジャーを対象に,質問紙調査を実施した. これらの中間的成果として、医療ADRのわが国への適用可能性をテーマに,ジョンズ・ホプキンス病院の調査結果を雑誌「病院」と「患者安全推進ジャーナル」に掲載発表した.また,早稲田大学紛争交渉研究所主催による医療ADRシンポにおいて,医療ADRの可能性と題し,シンポジストの一人として,調査の一部を発表した.平成19年度は,これらの調査をふまえ,実施調査の分析と研究調査活動に努めたい.
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