研究課題
本研究は3段階からなる研究であり、その第2段階にあたる2007(平成19)年度は、アメリカの批判的人種理論に学び、差別問題に関する法学方法論、とくに実定法解釈における理論展開の方法について考察した。具体的には、性差別に関する問題として、(1)強姦罪規定の解釈論と(2)ドメスティック・バイオレンスに起因する「夫殺し」と正当防衛の成否について研究した。前者の強姦罪については、強姦罪の主体と客体をめぐる議論において、ジェンダーの視点をいれて、強姦罪を基本的に男性による女性に対する性差別行為として位置づけることを検討した。これは1990年代以降のジェンダー研究において女性間の差異が注目されるなどして、フェミニズムが価値相対主義の影響を受けてきたのに対して、性差別と闘う普遍的なジェンダー正義の理論として、強姦罪の解釈論を敷衍しようとするものである。特に戦後沖縄における米兵強姦行為の違法性に着目して考察を進めた。後者は、ドメスティック・バイオレンスを女性に対する暴力、つまり性差別行為と捉える観点から、同様にジェンダー正義の実現のために、その被害者による加害者に対する反撃行為が正当防衛となりうることを検討するものである。この点については、2007年度ジェンダー法学会プレ研究会で「函館事件」に即して研究報告した。
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