1 新葬送システムの展開がどのように進んでいるかについて、平成18年度においては北海道と岩手県・京都府・兵庫県において調査を行った。散骨においては、都市住民を中心とする「撒く側」の論理と風光明媚な北海道や沖縄等の「撒かれる側」の論理が対立し、社会の分裂が深刻化している。北海道においては、長沼町において散骨を規制する条例が制定されたが、他の市町村においても指導要綱の作成などによって散骨を事実上規制する自治体も現れている。また、他方では散骨を業とする民間会社も多数登場し、事実上野放図の状態にある。他人の委託を受けて散骨を行い民間団体などの実態調査も行う必要があるだろう。 2 墓石(墳墓)の代わりに樹木を植える樹木葬も、次第に浸透している。この形態も千差万別であり、樹木の周りに焼骨を散布することによって墓地としての許可を受けないで樹木葬を行う業者(寺院)も登場しているが、他方においては自然環境のなかに墓地をどのように位置づけるという観点から、新たな墓地造成を志向する意欲も見受けられる。 3 無縁墳墓の増大によって、その整備を積極的に行う自治体も登場するようになった。その整備の過程で合葬式共同墓を設けたり、樹木葬のような新しい葬送.埋葬の形態を模索する自治体もある。しかし、現行の墓地埋葬法が現状にあわなくなり、また新しい葬送システムを導入しようとしても現行法が栓楷となってそれを実現できない自治体もある。そのため、抜本的な法改正を求める自治体も多い。墓地行政を担う各自治体が、野放図に展開する新葬送システムの展開に戸惑いながら、試行錯誤をはじめている。
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