平成20年度は、新しい葬送システムの導入が行われているデンマークとスウェーデンにおいてその法制度と実態についての調査を行った。両国とも、墓地行政は教会省の管轄であり、墓地の提供は、国または市の福祉行政として行い、その費用は教会税ないしは葬式税によってまかなわれている。 墓地や埋葬に関しては、詳細な法と規則によって定められ、「埋葬義務」が定められ、遺体や遺骨を個人で保管することは認められていない。ただ、1970年以降急速に火葬が浸透し、それに伴い遺骨の埋葬(処理)方法が多様化している。 国や市は、その多様な要求に応えるために詳細な規則を定め、従来の墓地空間のなかに新たな方式による埋葬方法を整備し、さらに環境に配慮したミンネスランドのように散骨型墓地空間も作り出した。 日本のように民間が指導する新しい葬送ではなく、国や市が率先して国民(住民)の要求に応えるように制度整備を行い、国によって「埋葬義務」の維持を行っているように考えられる。 日本では、祖先祭祀を前提とした埋葬システムが崩れつつある。法は「埋葬義務」を規定していないため、法の道徳的・倫理的基盤が崩れ、「何でもあり」の状況が続いている.新しい法秩序の形成が求められている。
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