本年度は、ADR法施行後、その認証を受けたADR期間が続々と誕生している状況を踏まえて、ADR認証取得前後の各種機関での手続構造の構成、手続実施者の養成研修プログラムの実施状況、設置後の活動の状況について、主としてヒアリングによるデータ収集を行った。その結果、司法書士会では、簡易裁判所事物管轄範囲内では訴訟代理権を持つことから、認証を得ずに、そのままADRを設置するパターン、弁護士会との協働によりADRを設置するパターン、報酬を一切取らずADRを設置するパターンなど、ADR法の規定との関係で多様なタイプの設置形態があることが確認できた。これは、必ずしも好ましい多様性ではなく、認証制度が一つのネックとなって、設置形態に制限があることの反映である。また土地家屋調査士会などは、そもそも弁護士との協働が前提されており、こちらは設置形態より、人材育成が課題であったが、そこでも弁護士と対話促進型手続運用のモデルとの間で、若干の緊張関係がある。 このほか、本年度は、医療事故紛争解決領域でのADR設立の動きについても確認した。東京の三弁護士会による医療ADRの実態把握と、千葉での医師会、弁護士会、行政の協働によるADR設置準備の動きについても検証してきた。 さらに比較のため、英国において、ADRサービスを提供する機関2カ所、および実際に手続実施者へのインタビュー調査も行い、比較対象の素材として活用した。 2009年度は最終年度であり、これらデータを取りまとめつつ、そこで発見された新たな課題について、今後の研究の方向を展望していくこととしたい。
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