エネルギー政策の二大目標である安定供給と環境保全にかかわる国法基礎理論の構築のため、平成18年度に行なったことは、第1に地道な文献調査・購読・分析、第2に国内外の研究者をはじめとする関係者との交流・意見交換・研究会開催、第3に国内外のシンポジウムにおける研究報告やパネリストとしての討論、であった。 第1の関連文献の調査及び分析については、日頃、エネルギー法関連の雑誌や著書等の公刊物を渉猟し、その内容をチェックすることはもちろん、国法基礎理論の構築を目的とする本研究にあっては、これらの最新のエネルギー法事情と伝統的な国家の基礎理論を摺り合わせることに努めた。とりわけ、法治国家論、社会国家論、環境国家論の再検討を通じて、一定の知見を得たため、これらの成果については、近日中に中間報告として論文の形で公表する予定である。 第2の国内外の関係者との交流については、関大・阪大合同研究会のメンバーとの議論や、環境法政策学会の有志たちとの討論を通じて多くの示唆を得た。特に、6月10日に明星大学で開催された環境法政策学会の第5分科会では「予防原則」がテーマに取り上げられたが、そこで司会とコメンテーターを務めることにより、主報告者やフロアの参加者たちと大いに議論することできた。また、3月18日から25日までドイツのベルリン自由大学、フンボルト大学、ハンブルク大学、リューネブルク大学を訪問する予定であるが、そこでフィリップ・クーニッヒ教授、ミヒャエル・クレプファー教授、ヨアヒム・ザンデン教授らと面会し、意見交換をするつもりである。同時に、ベルリンのエネルギー法研究所とコンタクトを取る予定でいる。 第3の国内外のシンポジウムについては、4月29日に韓国・建国大学で開催された東アジア・エネルギー協力法政策シンポジウムにおいて、日本のエネルギー法政策について報告し、パネリストとして討論に参加した。その成果はシンポジウム論集の形で公表されている。また、6月9日に東京・明治大学において「憲法における環境規定のあり方」をテーマにしたシンポジウムが開催されたが、そこでも報告書・パネリストとして参加した。その内容はジュリスト誌上に再現されている。さらに、11月17日には韓国・嶺南大学において、日中韓の研究者たちに交じって、日本の立場から「公共の福祉と基本的人権」と題する報告を行なった。ここでも公共において国家の果たす役割を論じつつ、基礎的問題を扱った。なお、その際用いた報告原稿は、脚注を付して加筆修正を施した上、編集部に提出してある。現在、編集作業中であり、1・2ヶ月後には公刊される予定である。
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