計画の最終年度にあたる平成20年度は、エネルギー政策の二大目標である安定供給と環境保全にかかわる国法基礎理論のうち、昨年から検討を続けている法治国家論と環境国家論を「法治国家としての環境国家」という視点からまとめあげた。特に、法治国家原則の重要な柱である基本権保障の原理と環境国家の基本原理である「予防原則」の相克を取り上げ、両者の緊張関係の中から、ダイナミックな法的発展が生み出される様を論証した。具体的には基本権と環境保全の関係づけや、国家の基本権保護義務と予防原則の連関について、エネルギー施設等から発生する電磁波による健康被害の問題などを盛り込みつつ、複雑に展開する議論の整理を行なった。 今年度の研究活動も、基本的に例年と同じく、第1に地道な文献調査・講読・分析、第2に国内外の研究者をはじめとする関係者との交流・意見交換、第3に国内外のシンポジウム・研究会等における研究報告及び質疑応答を中心に行なった。その成果は論文の形で公刊した他、口頭での研究報告の形で公表した。 国内でのシンポジウムについては、6月14日の環境法政策学会・第6分科会における「国内環境法政策・環境賦課金の法ドグマーティク」でコメンテーターを務めた。 国外においては、10月半ばからll月半ばに、ドイツ・ベルリン自由大学法学部に客員研究員として滞在し、フィリップ・クーニッヒ教授やクリスティアン・カリース教授と意見交換を行い、また、ベルリン自由大学法学部の連続講座(Ringvorlesung)の一環として、10月21日に「憲法論」を、11月11日に「環境法論」を講義した。ベルリンの研究者たちとの交流を深めたことで、来年度もまた、彼らと連携しつつ、本研究の延長線上で共同研究をすることが決まった。来年度早々(4月)にベルリンからの研究者がこちらを訪問する予定である。
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