平成19年度には、地下水法制度の在り方を検討する上で重要な検討課題の一つである地下水利用の権原の検討を行った。一つには、わが国の地下水管理法制度の変化に注目して「地下水=公水]論の類型化を行い、その中で特に公物管理法制度の下で地下水管理を行うことの意義と限界を検討した。この点で今後の検討課題としては、地下水の所有権を私人から地方公共団体等に移そうとする考え方が有する検討課題が明らかとなった(以下に述べる損失補償の要否の問題、「所有権の社会的拘束論」)。もう一方で、特に人格権の保護の対象としての地下水からの飲料水確保が認められているが、それは従来の地下水利用権に対する新たな構成を意味しているということである(原稿提出済みであるが掲載予定書籍が未発刊)。平成19年度に検討課題とされていた地下水法制の比較法的検討については、特にドイツ水管理法を素材に、作業を進めてきた。ドイツ水管理法は地表水及び地下水の双方を公物管理法政の下におき管理利用を行っており、また、一般利用を基礎とする道路法とは異なり、地表水及び地下水の利用については、権限ある機関の許可あるいは特許を要する利用制度を構成している。ここでは確かに利用者の利用権を所有権等に見いだすことはできないが、しかし、許可等を要しない利用関係では如何なる法制度を想定しているか、さらに利用規制に対し損失補償を要しないとする根拠として展開されてきた「所有権の社会的拘束」論は財産権を存在しないとしているのか等、今後の課題となっている。
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