行政救済法制に関して、日本では、2005年4月に行政事件訴訟法が改正された。また、行政不服審査法の改正案が2008年の国会に上程される予定である。本研究は、東アジア(韓国、台湾)における行政救済法制と比較することで、日本におけるこれらの制度改革のあり方を研究するものである。日本の制度についての研究にあっては、地方公共団体(自治体)を対象とし、行政実務の実態の把握に努めた。 具体的には、まず、研究の目的と、研究対象である「行政救済」の意義について明らかにした。続いて、日本の自治体における司法権の付与の可否について考察した上で、自治体における行政上の紛争に関する裁判外紛争解決制度(自治体ADR)について構想した。特に、訴訟や行政不服審査を個別に検討するのではなく、行政上の苦情処理も含めた総合的な制度の設計が必要なことを明らかにした。次に、自治体ADRの実現に向けた一段階として、自治体における総合的な行政不服審査機関の設置について、制度設計を行った。そして、その上で、2008年に予定される行政不服審査法の改正における意義と課題について、自治体の行政実務から検討した。このような日本における制度の研究に続き、台湾における訴願法の運用について、日本と比較研究を行い、及び韓国・釜山広域市における法務管理の実態を明らかにした。そして、これら東アジア諸国との比較から、日本における行政不服審査法の改正のあり方や、自治体における法務管理のあり方に関する新たな知見を得ることができた。
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