「玉野井芳郎の地域主義と沖縄自治憲章」(吉田善明先生古希記念論文集刊行委員会編『憲法諸相と改憲論』(敬文堂2007年8月)115〜138頁)を公表した。 本論文で論じた点は以下の通りである。 (1)マッカーサー草案は「彼ら自身の憲章」について述べている。玉野井は、自治体憲法を論じるにあたって米国流のホーム・ルール・チャーターが念頭にあったのではないか。 (2)玉野井は、地域が「本格的憲法」を持つ必要性を説いたが、彼の自治体憲法は、沖縄に即して「平和と生存を根幹とする沖縄自治憲章」として結実した。 (3)玉野井の地域主義は、沖縄によって深化した。それは同時に玉野井地域主義が沖縄で受け入れられる要因であった。 (4)玉野井「自治憲章」の歴史的意義は、第1に、玉野井「自治憲章」は、現在までほとんど知られず埋もれた状況であったが、現在ブームの自治基本条例の先駆であったこと、第2に復帰10年目の沖縄の自治を問い直すものであり、さらに道州制が議論される時代に今日的意義をもつこと。 (5)玉野井「自治憲章」の注目すべき特徴は、絶対平和主義、憲章の保障、抵抗権の記載にあった。特に、玉野井の地域主義は共同体を重視するが、「自治憲章」も沖縄の社会的基層であるシマに立脚した自治体の憲法として構想されたことにある。
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