本年度は、琉球政府について研究をした。特に実践的意義として来るべき道州制が念頭に置かれた。琉球政府については、その主席公選制や米国民政府との関係については、政治学者を中心に論じられてきた。財政についても若干の研究がなされている。本研究においては、これらの先行研究に負いつつ、それに付け加えて法的アプローチが行われた。特に次の2点は、道州制を考える上で大きな示唆を与えるものである。 (1)琉球政府の二つの政治概念を明らかにした。一つは法人としての政府であり、もう一つは統治機構としての政府である。県や市町村を地方政府と表現する場合があるが、琉球政府はそのような使い方を一般的に行っていたといえる。 (2)琉球政府の立法院の立法過程を明らかにした。立法院はアメリカ流三権分立の影響を受け、行政主席は立法院に出席することはできず立法勧告を行うのみであり、立法過程は立法院に独占されていた。しかし、運用の実質は、行政府により立法(案)は作成されていた。 (3)沖縄返還に際して、琉球政府と市町村はその法的取り扱いは別であった。琉球政府は消滅したが、市町村は戦前、戦後そして復帰後も同一法人として法的性格の変更なきまま存続した。 研究成果は論文として執筆中であり、次年度(08年4月以降)中に沖縄大学の紀要で公表の予定である。 また、琉球政府の地方課勤務の経験を持ちその後恩納村長、沖縄県副知事を勤めた比嘉茂政氏にヒヤリングを行い、その成果は自治おきなわで公表した。
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