研究課題
基盤研究(C)
本研究の結果明らかになったことは、次の四点である。第一に、アメリカ合衆国各州において発展しているブラウンフィールド・プログラムが、2002年連邦新法(中小企業免責及びブラウンフィールズ再活性化法=CERCLA修正法)の支持を受け、生成の時期を超え、発展していることが明らかになった。すなわち、CERCLAの副作用(潜在的責任当事者の法的責任を広くとらえ、司法手続=対審構造による紛争解決を求めたことにより、ブラウンフィールドが発生し、各種社会問題を生んだこと)を各州によるプログラム(行政手続を含む)及び新法・新規則(修復責任の限定を含む)によって解決・緩和している状況が明らかになった。第二に、日本において、土壌汚染対策法の施行は、自治体の土壌汚染対策に重要な手がかりを与えたが、その適用範囲が狭いこととリスクに基づく汚染修復が必ずしも適切に選択されているわけではないことが明らかとなった。第三に、上記日米における土壌汚染対策法制の制度設計及びその行政・司法手続についてその実態調査をふまえて比較した場合、対審構造とリーガリズムに依拠したアメリカの特徴がやや緩和されている(その緩和も法的責任の制限を法律や協定により定めることにより行われている)のに対して、日本では、自治体の行政指導(対審構造でもないし、リーガリズムにも依拠しない)を中心とした対応から一部法律・条例に基づく(法的)対策に変化した。ただし、土壌汚染対策法の適用範囲が狭いこと(これについては、同法改正予定)と同法制定後も行政指導中心の規制スタイルには変化がないことも明らかになった。第四に、行政事件訴訟法改正を含む行政法改革が近年行われているが、それによる司法的統制手段の発展により、上記日米環境法の形成と運用に影響を与えると考えられることが明らかになった。
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Administrative Law and Judicialized Governance in Japan, in Tom Ginsburg & Albert H.Y.Chen,eds., Administrative Law and Governance in Asia : Comparative Perspectives(Routledge)
ページ: 81-100
Administrative Law and Governance in Asia : Comparative Perspectives(Tom Ginsburg & Albert H.Y.Chen, eds.)(Routledge)
「合衆国における土壌汚染防止・対策法展開の一断面」岩間徹・柳憲一郎編『環境リスク管理と法』所収(慈学社出版)
ページ: 219-233
Environmental Risk Management and Law(Toru Iwama & Ken'ichiro Yanagi, eds.)(Jigakusha)