研究課題
基盤研究(C)
本研究は、ドイツ法治国家論の基本原理として法的な内実を発展させてきた比例原則に関する理論的な研究を踏まえつつ、その現代的変容あるいは精緻化が必要になる場面を具体的な「安全」維持目的の国家行為との関係で検証し、そこでの変容が再び理論に及ぼす影響を確認しながら、21世紀の現実的な要請に耐えうる比例原則の体系的理論の構築を目指すものである。その際、A:法治国家原理から派生する比例原則の理論的研究、B:EU法における比例原則の発展に関する実務動向研究、C:ドイツ憲法判例上の治安目的規制に関わる違憲性審査の比較法的研究、の三つの柱を軸に進められている。このうち、Aについては、基本的関係が認識され、次年度から各部分内容につき、認識を発表できる段階まで到達した。Bについても、分析対象の特定が進み、次年度において新たな動向を確認するための論文を用意する準備が整った。Cについては、判例分析の作業を進めており、今年度に口頭で報告した判例研究を次年度は原稿化し、体系的研究につなぐ接点を構築する。現時点までに確認されているのは、比例原則のアンビヴァレントな発展のあり方であった。警察比例という限られた範囲に射程を限定された原則であった比例原則が、ドイツ連邦憲法裁判所によって一般的な違憲性審査基準へと発展し、さらにはEC裁判所の判例によって自由権以外にも射程を拡げ、一般的な国家行為の合理性を担保するための基準として用いられるようになる拡大プロセスが一方にある。しかし、対テロ治安規制の中で、規制目的が伝統的な危険防御を超えて漠然化していく中、比例原則の統制力が鈍っていく過程が他方で進んでいる。今後の課題として、この規制目的の漠然化を統御する手がかりを実務・理論の中で確保することが重要になる。
すべて 2006
すべて 雑誌論文 (3件)
欧州憲法条約とEU統合の行方(福田耕治編)(早稲田大学出版部)
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Junichi Murakami/Hans-Peter Marutschke (Hrsg.), Globalisierung und Recht, [de Gruyter]
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グローバル化と法(村上淳一, ハンス・ペーター・マルチュケ編)(信山社)
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