本年度は、初年度ということもあり、まず、先制的自衛権に関する研究の前提として、自衛権に関する内外の論考を広く収集して研究した。 同時に、本研究の着想の契機となったアメリカ政府による「国家安全保障戦略」と、それに対して懸念を表明したアナン前国連事務総長による「アナン報告」を中心に、関連する基礎的な資料と情報の収集にあたった。基礎的な資料の多くは、インターネットを用いてアメリカ政府や国連のHPから収集することができたが、それらの資料のみでは不明な点が残ったので、別用でワシントンおよびニューヨークを訪れた機会を利用して、アメリカ政府関係者ならびに国連の法務および軍縮部局の関係者にインタビューを行い、それらの解消に努めた。また、それらの一次資料に加えて、上記の諸文書を分析する諸外国の論考の収集も行ったが、その本格的な検討は次年度に行いたい。 また、本年度の研究の過程で、「国家安全保障戦略」は必ずしも先制的自衛権の問題にのみ関係するわけではなく、テロリスト等の非国家主体に対する自衛権の行使の問題にも密接に関連を有していることが明らかとなり、さらに後者の問題が最近になって国際司法裁判所の争訟事件や勧告的意見においても取り上げられていることが判明したので、今後はこの側面も検討対象に含めつつ研究を続ける予定である。
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