本年度、特に力点を置いたのは、公海上の航行の自由との関係である。その際、以下のような問題に関する検討に力点を置いた。 1.まず、国連海洋法条約上認められている、公海海上警察の分析を徹底して行った。 2.次に、2005年10月に既に、国際海事機関(IMO)により、海洋航行不法行為防止条約(SUA)の改正議定書が採択されている。この条約に関しては、本年度は、(1)起草経緯の分析、(2)外国船舶への「介入」の一般条約における「先例」として、1988年「麻薬及び向精神薬の不正取引条約」第3条(犯罪化)、第4条(裁判権)、第17条(「介入」許可要請権)と、2000年「移民密入国防止議定書」第6条(犯罪化)+第8条(「介入」許可要請権)とを、比較検討材料として、異同を明らかにし、加えて、(3)日本政府機関が、批准の際の問題点として意識されている点に関して、詳細な意見交換を行った。 3.さらに、分析対象とした甲は、従来、叛徒団体との関係で、古典的な事例として、Virginius号事件(1873年)、サンタ・マリア号事件(1961年)である。これらは関係国が「介入」の根拠として、「海賊船舶」を主張するものの、今日では、「保護主義」に基づく「先例」と再構成することが可能であることが明確となった。さらに、テロリストの乗船する船舶に対する臨検・拿捕問題は、さらにアキレ・ラウロ号事件(1985年)、米国国内法、海洋航行不法行為防止条約と上記の改正議定書の蓄積があり、その点の分析を深めた。 4.最後に、国連安保理の授権に甚づく、非軍事的措置の実効性を確保するための「海上阻止行動」(MIO:Maritime Interception Operation)ないし「禁輸執行活動」(Embargo Enforcement Operation)と呼ばれる行動が、従来の活動と明らかに異なる、国際安全保障に関しての、機能分化を示していることも明確となった。
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