本年度は3つの方向からの研究を行った。 第1は、2005年にハーグ国際私法会議で採択された「管轄合意に関する条約」について、各条文が起草される際の議論をもとに審議過程でコンセンサスが形成された解釈論をまとめた解説書の執筆活動である。これは、共同作業で行っており、ロンドン大学のTrevor Hartley教授とe-mailのやりとりを主たる手段として討議を行い、また、下記のパリ出張の際、足を伸ばしてロンドンで直接議論を行った(その他、別件で2007年3月にハンブルグで開催された日本とヨーロッパの国際私法に関するシンポジウムで同席した際にも議論をし、まとめ方について相談をした)。以上の結果、報告書はまとまりつつある。 第2は、同条約について、上記の解説書とは別に、条文を翻訳し、日本としてどのように対応してきたかをまとめておくという作業である。これは、上記の解説書の土台となるとともに、将来、日本の同条約批准の可否が論じられる際の参考に供するためのものである(公表論文の通り)。 第3は、裁判管轄の合意と並んで、国際的な民商事紛争の解決について用いられる仲裁合意についての研究である。国際商事仲裁の中心地のひとつである国際商業会議所(パリ)に出張し、そこで開催されたワークショップに参加し、知見を深めた。この成果は上記の2つの研究に盛り込まれている。
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