1.前半には、(1)農政改革の最重要施策である品目横断的経営安定対策の実施状況をフォローし、集落営農・特定農業団体の急増、貸しはがしの発生、他方での規模拡大の新たなメカニズムの登場、法人化への趨勢など、多様な影響が生じていることを確認した。(2)日本の経営・構造対策の到達点とその内容を、日仏比較の視点から沿革を踏まえて整理し直し、日本の農地制度が対処すべき今後の課題を多面的な形で確認した。論文(1)がその成果である。 2.上記1-(2)を踏まえて9月にパリに赴き、2006年1月の新「農業の方向づけの法律」と関係施策の実施状況の聞取り調査を行った。EUの新・直接支払制度が農業経営の展開動向に大きな影響を与えており、農地制度上でも、譲渡可能な賃借権の創出、一体としての処分可能な「農業資産」の制度化、新たなタイプの生産法人の登場などの変化が生じている。この現地調査の成果は、1一(1)の作業とともに、論文(3)の考察の前提の一つとなっている。 3.国内では9月以降、農地政策と農地制度の大幅見直しの動きが急展開した。本研究者は、農水省委託の農業経営基盤強化措置状況調査、先進的経営者も加わった全国農業会議所の農地制度検討委員会、農水省経営局の農地政策検討有識者会議に参画し、多大な情報を入手し、新しい諸問題(多数の小規模地主と借地型大規模経営の対応関係、そこに生じる面的集積や経営安定化と承継の課題、新規参入の特定法人の多様な性格、相続による不在地主の増加と遊休不耕作地の拡大など)の登場を確認した。論文(2)は、それらの問題を日仏比較の視点から考察している。 4.農水省の農地政策検討有識者会議は、転用規制等も含む広範な事項を更に討議したうえ、2007年夏頃に一応のまとめをする予定なので、本研究者としてもその時期を目途に研究成果の中間取りまとめを行いたいと考えている。
|