事業法と競争法のインタフェイスについて、基礎的な研究を行った。まず、支配的事業者に対する規制について、これまでの成果を含めて、共著の書籍を出版した。共著の『競争の戦略と政策』(研究業績欄参照、以下同じ)は補完財商品供給者間の垂直的統合および垂直的契約が競争政策および経済政策でどう評価されるかを検討している。『独占禁止法』『ケースブック独占禁止法』は教科書ではあるが、内容は最新の研究成果を反映したものである。雑誌論文の「医療用生地菅の輸入排除による私的独占」は支配的事業者による競争者排除行為の私的独占該当性を検討し、『知的財産法と競争法の現代的展開』では知的財産権が関わる場合の独禁法の適用の理論的枠組みを示した。前者では、ECの支配的地位の濫用規制との比較も視野に入れた検討を行った。雑誌論文「1947年独占禁止法の形成と成立」は、西村との共同研究「原始独禁法の制定過程と現行法への示唆」を基礎とする研究成果であるが、その中では、私的独占規制および事業法規制と独禁法の関係に関して独禁法制定者がどのように考えていたかを第1次資料を網羅的に検討して明らかにした。この研究は、公正取引委員会の競争政策研究センターの公開セミナーにおいても報告をし、上杉秋則氏と公開の対談を行った。そこではECの市場支配的地位の濫用規制と日本の私的独占の規制、不公正な取引方法の規制との比較、日本法の射程等を議論し、その議論は同センターのウェブサイトに掲載されている。 また、総務省のモバイルビジネス研究会(座長代理)、電力系統利用協議会(中立会員)に参加し、実務との架橋を図っている。モバイルビジネス研究会では、携帯電話市場においていかなる規制が必要かどうかについて、販売奨励金、シムロック、MVNO等のあり方について検討を行っている。
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