「独占禁止法と金銭的サンクション-EC競争法上の行政制裁金制度とその賦課手続-」と題する本研究の初年度は、欧州委員会の行政制裁金算定ガイドラインおよびカルテル・リニエンシー告示が改定されたことから、これを検討した。それとともに、本研究開始前に、2005年6月分まで既に調査済みであった欧州委員会によるEC条約81条、82条違反行為者に対する制裁金賦課の件数、制裁金額、賦課対象事業者数などについて、フォローアップの調査を行った。 2006年9月に官報に搭載された新しい制裁金算定ガイドラインは、幾つかの点で従来のガイドラインを修正・変更する内容となっている。例えば、算定の基礎となる売上高は、原則として違反行為の対象とされた地理的範囲における違反が直接間接に関係する商品・サービスの売上高とされた。基本制裁金額はこれの最高30%までとされた。 またカルテルに関するリニエンシー告示も2006年12月に発表された。旧告示と比較して大きな相違はないが、制裁金の免除を受けるために、どのような証拠を提出すれば告示の定める要件を充たすのかがより一層具体的に示されていること、従来の運用上存在した「マーカー」の地位を初めて告示で公認したことなどが特徴である。 2005年6月以降の欧州委員会による運用において最も目立つのは、2007年に入って著しく高額の制裁金を課される事件が現われたことであろう(ガス絶縁開閉装置カルテル事件、エレベータカルテル事件)。これらは長期間にわたって違反が行われていたこと、および繰返し違反が一部にみられたことによる。いずれにせよ、当初の計画に従って、研究を続行していきたい。
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