2007年度は、EC競争法における市場支配的地位の濫用に関する事件のうち、課徴金が賦課されたケースについて検討した。EC条約82条(市場支配的地位の濫用の禁止)違反で制裁金が課された事件は、40件前後みられ、その行為類型は、取引拒絶、不当廉売、価格圧搾、差別対価、抱合せ、忠誠リベート、排他的行為などである。82条違反のケースの具体的な特徴は、(1)排除的濫用のケースが多い、(2)82条違反の場合、従来違反とされたことのない新規の行為類型が問題となる場合があり、このようなケースについては、A新規の行為類型であったが重い制裁金が課されたケース、B穏当な制裁金が課されたケース、C1000ユーロの名目的な制裁金が課された事例、D制裁金が課されなかった事件に分かれる。 併せて本年度は、不当な取引制限、排除型私的独占、不公正な取引方法の-部に対する課徴金制度のあり方や公取委の審判制度のあり方を検討してきた内閣府の独占禁止法基本問題懇談会が報告書を公表したことから、このうち特に不当な取引制限と支配型私的独占に対する課徴金の改正のあり方について拙稿を執筆した(ジュリスト1342号)。
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