今年度はアメリカ合衆国の犯罪被害者支援団体や、犯罪被害と関連した団体である犯罪者の矯正に携わっている団体等の大会に参加することによって、被害者の団体の実情、被害者の課題への配慮や取り組みについて調査することが中心となった。 日本では、犯罪被害者団体は若く、被害者の遺族の手作りの活動が注目されている。これに対して、アメリカ合衆国ではむしろ以前の事件の被害者の遺族の主張とそれを支持して支援活動を展開し、そのことによって自ら経済的な自立を獲得したアドボケートの活動が中心となっており、最近はむしろ被害者自身の声が聞かれることが少なくなっており、それを改善することが課題として提起されていることが判明した。 被害者を配慮した活動としては、アドボケート型とメディエート型に類型化が可能なことが明らかとなった。アメリカ合衆国においては、前者については、政府による財政的援助の役割が重要であり、それによっていわば有給のボランティア活動が嚆矢となり、アドボケートとして活動する女性の経済的自立と関係しているという日本ではあまり知られていない実情を知ることができた。アメリカ合衆国といえども無償のボランティアを得ることは容易ではないことも明らかとなり、わが国の犯罪被害者の考察を行うにあたって有益な情報を得ることができた。 本年は日本の犯罪被害者調査のための前提的知識の獲得を中心としたが、わが国の少年事件については、1980年代に少年5人を中心とするグループによって同年代の2名が命を奪われ、少年に対する死刑判決が第1審で言い渡された、当時最も社会的注目を集めた事件の被害者の遺族を訪ね、聞き取りを進めた。その他の少年事件については、2家族について被害者の遺族の現住地域を訪ねて自宅を目視で確認し、電話で話をしたりしているが、まだ面接による調査は行っていない段階となっている。
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