研究課題
基盤研究(C)
本研究は、比較民事訴訟法および国際民事訴訟法研究に必要不可欠な比較法の基礎理論について、わが国を代表する碩学杉山直治郎の業績を再評価するという学説史の手法により新たな提言をおこなおうとするものである。杉山の業績は、初期の比較商法学研究、比較法学の観念について、比較法学の根拠の二大論文に代表される盛期の基礎理論研究、附合契約の観念についてに続く応用比較法学の豊饒化、田中耕太郎の世界法の理論の影響を受けた普遍比較法学・普遍世界法学の提唱、日本比較法研究所の運営と平和の比較法学の構築の時期に大別できる。その現代的意義を要約すれば、次のとおりである。第一に、国際平和こそが比較法の究極的目的であることを踏まえて、人類連帯的平和の比較法学の構想を樹立したことが、不朽の業績である。第二に、1918年という極めて早い段階で比較法学という独立の学問分野を打ち立てた。第三に、実定法の進歩を目的とする比較世界法学に立脚した比較法学の総合的体系化をこころみ、その成果を世界の学界に発信した。第四に、科学的自由探求の解釈方法論による隠れた実存世界法の実証を核心とする比較法源論を確立した。第五に、膨大な各論的研究を自国法の進歩ないし自国法と普遍法との調和という視点から完成した。第六に、比較法学を含む渉外私法学の組織的研究を推進する比較法研究所の構想を提示し、戦後は日本比較法研究所の運営という形でこれを具体化した。普遍比較法学としての比較国際民事訴訟法の構築を目指す筆者の立場からしても、近時渉外民事訴訟原則という形で実現された法のハーモナイゼーションの基礎理論としても、杉山の卓越した業績は再評価されるべきである。
すべて 2008
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立教法務研究 1
ページ: 29-104
RIKKYO HOMUKENKYU, volume 1