第1に、我が国と同様、欧米法とは異なり、建物と土地を別個の不動産とする韓国法について、集合建物法の度重なる法改正で研究成果の公表が遅れていたが、平成20年12月までの改正の動向を盛り込んだ研究成果の一部を公表した。 第2に、区分所有法が規定する二つの団地の建替え決議制度うち、建替え承認決議制度と一括建替え決議制度の理論的課題についての分析をおこなった。前者が、敷地利用の変更について敷地共有者の承認要件を緩和したのにとどまっていたことと比較すると、後者は、第1に、棟を超えた共有関係にない団地建物の所有者間であっても、敷地の共有者であることを介して、団地内の他の棟の建替えを含めた建替え決議ができることが前提とされている点で違いがあることが明らかになった。 このような建替え承認決議制度と一括建替え決議制度の分析から、団地建替え事業における区分所有関係者間の利害調整を正当化するための理論モデルとして、二つのモデル(区分所有関係者間の利害調整を区分所有関係の実質が建物区分所有権にあるとして上で、敷地利用権との分離処分禁止を根拠とするモデルと敷地利用の共益性を根拠に正当化するモデル)を構築する必要性の有無を検討中である。 団地の建替えやマンション群の再建事業では、敷地所有権の共有者と棟別のマンションの区分所有者の範囲は一致しないことから、区分所有権と棟別管理組合・団地管理組合の関係を分析し、区分所有権を団体的権利として再構成する必要があるのかどうかについて、さらに理論的に解明する必要が生じた。築30年を超えるマンションの半数以上が団地を構成していることから、平成19年度に行ったマンション一棟建替え制度における団体法と所有法の関係についての研究成果を再点検する必要が生じ、理論モデルを公表するためには、もう少し時間がかかりそうである。
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