標記研究の最初の年であるため、まず文献や情報等の資料収集に努めた。本年特に力を入れたのは、ドイツとの比較法的研究である。ドイツは、近時、非訟事件法の全面改正を目指して、法案が連邦議会に提出された。そこでまずこの法案と立法理由書を入手することから研究を始めることにした。この資料については、ドイツのレーゲンスブルクの訴訟法研究所を通して、入手することができた。現在、700頁にわたる資料の検討、分析を進めているところである。また、2007年2月15日から同24日まで、ドイツ・フライブルクのドイツ民事訴訟法・外国民事訴訟法研究所において、ドイツ非訟事件法改正に関する文献を収集すると同時に、ドイツの非訟事件の手続構造、とりわけ職権主義をめぐる従来の議論をフォローするための文献収集を行った。近時、ドイツにおいては、新しい雑誌の刊行が相次ぎ、FGPraxなどに。標記研究に関する重要な論文が掲載されるにいたっているが、日本では入手しにくいものが多く存在する。中にはフライブルク大学にもない文献も存するが、できる限り、上記研究所の協力を得て、多くの資料を入手してきた。これらについても現在、検討、分析を進めているところである。特に現在は、非訟事件に特徴的な審理原則である職権探知主義に関する文献を中心に読んでいる。ドイツにおける非訟事件法の改正動向としては、婚姻関係事件の管轄の家庭裁判所への集中が挙げられるが、そこで問題となるのは、地方裁判所で弁論主義の下に審理が行われてきた、家事財産事件の処遇である。これを職権主義で審理することの可否、限界が盛んに論じられている。当面は、この問題に集中して、職権探知主義とはいかなる審理方式なのか、日本では相対的な違いしかないと受け取られている、弁論主義との違いは、実務的にはどのようなところにあるのか等の問題に取り組みたいと思っている。
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