平成19年度は、比較法研究のうちドイツおよびオーストリアの非訟事件手続に関する法律、学説に関する研究を引き続き行った。ドイツは、現在新法の法律案が議会において審議中の状態である。現法律案が連邦参議院で修正を加えられる可能性も否定できない。そこで主として、ドイツにおいては、有力学者へのインタビューを行う形で、新法の評価を行うことにつとめた。具体的には、レーゲンスブルク大学のゴットバルト教授ならびにドイツ非訟法に関するコンメンタールを出版しているヘルベルト・ロート教授の二人にインタビューを行った。その成果は、平成20年度にドイツにおける議論の状況という形で、論文の一節に公表するつもりでいる。また、すでに新法が施行されているオーストリアにおいては、リンツ大学のブーフエッガー教授を訪ね、ドイツにおけると同じ質問を向けてみた。オーストリアにおいては、新法に関するコンメンタールがすでにいくつか出ており、現在その一部を入手して分析を行っているところである。ドイツとは多少異なる内容となっているが、これについても、非訟事件手続における手続保障に関する論文の中でその成果を取り入れるつもりでいる。平成19年度は、海外調査で入手した文献や資料の分析が主な研究対象となっていた。その中心は、ドイツにおける膨大な量の立法資料の分析である。そのかたわら、各種の雑誌に目配りをし、立法案に対する意見表明や修正提案について、学説をみることに終始した。その作業は当分の間の時間を要することになる。その一方で、非訟事件手続の審理原則に関する研究がすすみ、平成19年度は、非訟と訴訟の境界領域にある人事訴訟手続における職権探知主義に関する論文を公表した。
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