他人のための事務処理制度には、民法上の典型契約である委任・準委任、雇用、請負、制限行為能力者のための財産管理、遺言執行、代理、法人の代表、さらには信託などさまざまなものが存在し、それぞれにつき固有の規定や規範が認められるが、これらのうちいくつかが一つの社会関係において、当事者が意識しないまま複数存在することがある。本研究は、そういった場合に認められるべき法律関係の全体を像を明らかにしようとするものである。 この目的を達するために、本年度は、主として次の作業を行った。 (1)他人のための事務処理制度の競合が問題になったと考えられる判決例の分析。 (2)委任・代理・代表と信託における事務処理者の権限と義務の構造の比較分析。 (3)委任・代理・代表と信託における事務処理者の権限外行為の扱いの比較分析。 (4)委任・代理・代表と信託における事務処理者の義務違反の扱いの比較分析。 (5)伝統的な民法上の諸制度と信託の関係についての比較法的考察。
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