当事者が意識しないまま事務処理関係が競合することがある。そのうち、とくに委任等の事務処理契約と信託の競合は、事務処理のための費用として金銭が交付される場合など、非常に広範に生じる。事務処理契約の法律効果と信託の法律効果は、すでに基本的なものについて大きく異なる(たとえば、受任者・受託者の権限と義務の内容、権限違反行為・義務違反行為の効果)。そのため、この場合の当事者間の法律関係をどのように認めるかが問題となるが、当事者が意識しなかった信託の法律効果は黙示の合意により基本的に排除されており、意識的に設定した事務処理契約によって基本的に規律されると解すべきである。ただ、信託の効果としての倒産隔離効を排除する意図は当事者に通常なく、したがって、その前提となる効果(たとえば、受託者の分別管理義務)も通常認められるべきこととなる。
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