本年度(平成18[2006]年度)は、研究課題に係る基礎調査の結果をまとめるとともに、実状を把握するための研究を行った。すなわち、「裁判外紛争解決手続の利用の促進に関する法律」(平成16年法律第151号。以下、ADR法という)の立法過程で基礎資料とされた内閣府の司法制度改革推進本部事務局による調査結果「民間ADRに対するアンケート調査の結果」(2002年4月15日)と愛媛地域における裁判外紛争処理の実状を把握するために小職が行った対照調査(以下、愛媛調査という)の結果を整理して所属機関の紀要上で発表した。対照調査及び分析の結果、司法制度改革推進本部事務局が行った調査(以下、中央調査という)でも愛媛調査でも8割近くの機関が相談や助言を内容とするサービスを提供しているが、相談者に対するサービスにとどまらず相談者からみた紛争の相手方にも何らかの形で接触して紛争の解決を図る斡旋・調停・仲裁等を内容とするいわゆる介入型のサービスを提供しているところは相対的に少なかった。中央調査でも愛媛調査でも介入型サービスを提供している機関の割合は斡旋・調停・仲裁の順に低くなっており、介入の度合いが強くなるにつれサービス提供機関が少なくなっている点では共通している。しかし、その割合は斡旋について(中央調査:約65%、愛媛調査:約36%)よりも調停について(中央:約41%、愛媛:25%)のほうが開きがあり、さらに仲裁について(中央:27%、愛媛:約11%)はより大きな開きがあることから、愛媛地域では介入型サービスの提供が低水準であることが認められる。地域におけるADRの実情については、岡山地域でADRサービスに従事する実務家との座談会の形でも参考情報の提供を試み、同様に紀要上で発表している。その他、研究課題に関する学内外のシンポジウム等において研究報告等を行った。現在、総合法律支援法による法情報提供サービスやADR法による認証ADR制度の発足等の影響を調査中である。
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