本年度(平成19[2007]年度)は、研究課題に係る実状を把握するための研究を行った。すなわち、「裁判外紛争解決手続の利用の促進に関する法律」(平成16年法律第151号。以下、ADR法という。)の施行が、地域における裁判外紛争解決(以下、ADRという。)サービスの拡充にどのような影響を及ぼしているかについて調査を進めた。法施行前に実施したアンケート・聴取調査では、同法に基づく認証制度に高い関心が寄せられていることが判った。しかし、法施行後の聴取調査から実際に認証申請をしたものは意外に少なく、それに応じて認証を受けたサービスも現時点では僅かな数にとどまっていることが判明した。同法がADRサービスの動向そのものにいかなる影響を及ぼしたかについては即断できないが、前年度調査実績報告で言及した介入型サービスの提供については、大都市圏とそれ以外の地域でサービス提供の質と量に法施行前よりも大きな格差が生じたようにみえる。当研究で当初から調査対象としてきた愛媛地域についてみると、昨年度末までに土地家屋調査士会が主体となって設けられた認証ADRサービスが発足しており、これは地方都市における認証ADR第1号となったようである。岡山地域でも他地域の動向をみつつ、認証ADRサービスの発足に向けた新たな動きがみられるようになってきており、引き続き注視する必要がある。また、上記のように首都圏及び京阪神圏を除く多くの地域では既存のADRサービス提供者においてさえ認証取得への動きは法施行前に比べて緩やかになった印象を受けることから、今年度は、従来の調査と併行して地域における個別分野(行政、医療、土地紛争等)ごとのADRサービス提供の可能性を検討してきたところである。今後は、法施行前後を通じてみた地域におけるADRサービスの現状と課題を明らかにしていく予定である。
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