本年度は法制度の分析と運用に関する国内実証調査研究に重点を置いた。 家庭裁判所、家事調停法制、参与員制度、遺産分割制度等の基本的な制度・運用に関する文献研究に重点を置き、その上で、家庭裁判所、家事調停委員、ADRの運用研究と取り組んだ。具体的には、以下の通りである。 (1)ADR促進法(裁判外紛争解決手続の利用の促進に関する法律)が2004年11月に成立し、2007年4月より施行された。これを受けて、2004年度・2005年度のADRの利用状況等の現状を調査した。裁判所内で実施される司法型ADRについてはよく利用されていると評価できる(2005年の既済事件数を例にとると、裁判上の和解が15万件以上、民事調停約33万件、家事調停約30万件である)。しかし、行政機関や独立行政委員会等で行う行政型、及び弁護士会や民間組織の行う民間型は利用数が少ない。日本におけるADRの利用状況と問題点をまとめ、2006年9月に熊本で実施された国際シンポジウム「日中韓におけるADRの制度と実態」で報告を行い、中国・韓国の研究者とも意見交換をすることができた。 (2)婚姻関係、及び親子関係(実親子関係と養親子関係)の形成・確認を行う人事訴訟手続は、家庭裁判所が管轄権を有するが、訴訟の前に家事調停手続を経る必要がある(調停前置主義)。そこで、家事調停手続と人事訴訟手続の関係をどのように把握すべきか(両手続をどの程度連続的に把握できるか)について研究を進めた。研究成果は、「家庭紛争に関する裁判外紛争解決システム」として公刊した(『法化社会と紛争解決』所収)。 (3)家庭裁判所の非訟事件手続である家事審判手続について、民事訴訟手続・人事訴訟手続と対比させながら、その特質を分析した。 (4)家庭に関する諸問題に対処する裁判所以外の機関(家庭問題情報センター)について、利用状況は どうか、いかなる点で裁判所との連携が可能であるか、その際の問題点は何か等について検討した。
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