(1)本年度は、家庭事件に関する紛争処理制度の比較法研究に重点を置き、法整備が進展しているドイツ法の調査・研究を行った。ドイツではコンスタンツ市に2週間滞在し、ADR機関の担当者等実務家との面談及び文献収集を行った。具体的な実態調査結果は以下の通りであった。 ドイツの家庭事件に関するADR機関に関しては、種々のものが存在する。具体的には、半官半民の機関であるプロファミリア(Pro Familia)、教会系の相談機関、純然たる私的な相談・調停機関である。なかでもプロファミリアはドイツ全土で200カ所程度置かれ、一般市民にもよく知られ、利用実績も多い。 プロファミリナには、次のような特徴が認められる。(1)多様な専門(法律学、心理学、社会学、医学、及び性に関する問題)のスタッフを擁し、互いの連携により相談・解決にあたっていること、(2)一般市民にその存在を知らしめるような広報活動(各種イベントへの参加、地域のミニコミ誌への広告等)を行っていること、(3)近年、インターネットでの相談活動を実施しており、これにより、利用者が匿名でかつ無料で相談することが可能となったこと、(4)調停の際には、訓練を受けた専門スタッフが担当していること、(5)州(ラント)等の補助金がその活動を支えていること等である。 (2)これに対して、日本における家庭事件の解決を見ると、裁判所以外の紛争解決機関は、ほとんど機能していない。勿論、日本の家庭裁判所による解決システムにも、多くの利点がある。しかし、他方で、(1)当事者の感情をケアできない、(2)当事者がどのように対応すべきか迷っている段階での「相談」業務は予定されていない、(3)当事者に「心理的な障壁」がある場合が多い等の限界がある。 (3)上記(1)・(2)の比較研究については、本年度に実施した実態調査、及び収集した文献により、成果を公表するべく準備を行った。来年度に公刊する予定である。
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