研究概要 |
ロンドン大学IALS(Institute of Advanced Legal Studies)において、マネジメント・バイアウトをめぐるイギリスの法制度につき、調査・研究を行った。 マネジメント・バイアウトとは、現在の企業の所有者から当該企業の現従業員が重要な要素となる新所有者グループへの企業所有権の移転に関する取引をいい、1980年代以降からイギリスで急速に発達してきた手法である。イギリスにおけるマネジメント・バイアウトは、ノンコア事業の切り離し、後継者問題への対処、企業業績を高めるための経営陣および労働者に対するインセンティブの付与、国営企業の民営化のための手法として用いられてきた。 マネジメント・バイアウトは、会社法のみならず民法等の様々な法領域に関わるテーマであるが、マネジメント・バイアウトに参加する経営陣の利益相反の問題を中心とした規制がなされている点がイギリスの特色である。ただし、利益相反をめぐる問題の規制は、マネジメント・バイアウトのみを対象として展開してきたものではなく、マネジメント・バイアウトにおける利益相反をめぐる問題の規制に関しては、他の領域と同様のルールが適用される(取締役の利益の開示(コモンローおよび1985年会社法317条)、利益相反を回避するための監視および開示制度(1985年会社法312条ないし316粂)など)。また、公開会社に関するマネジメント・バイアウトについては、シティコード(The City Code on Takeovers and Mergers)、ISCのガイドライン(Institutional Shareholders, Committee Guidelines)、ロンドン証券取引所の上場規則(The Listing Rules of London Stock Exchange)が利益相反の問題に関するルールやガイドラインを定めている。
|