マネジメント・バイアウトにおける利益相反の問題は広く認識されているところであるが、マネジメント・バイアウトが成立するためには買い手が引き受けることのできる金額が提示される必要があり、そのために必要な資金を外部から調達する方法についても検討する必要がある。この点に関しては、イギリスの法制度が参考になると思われるので、イギリスの法制度の検討を中心に研究を進めた。 イギリスでは1980年代以降マネジメント・バイアウトが急速に発達してきた。その背景には、1981年会社法において、会社株式取得に関連して会社が財政的援助をすることについての制約が緩められたことが指摘されているが、この点はわが国におけるマネジメント・バイアウトの普及を検討するうえで参考になるものと思われる。 イギリスでは、会社またはその子会社が、当該会社株式取得のために直接的または間接的に財政的援助をすることを原則的に禁じている。しかし、例外的に、(1)財政的援助の主たる目的が当該会社株式取得のためではなく、会社の利益のために善意で行われる場合や、会社が株式を取得する者の責任を減免するためではない揚合、(2)対象会社または子会社が非公開会社の場合で、かつ当該会社株式取得のための財政的援助により会社の純資産が減少しない、または配当可能利益の範囲内で財政的援助が行われる等の要件が満たされる場合には、財政的援助を行うことが認められる。これらの例外規定はマネジメント・バイアウトにも適用され、デットファイナンスによる非公開会社のマネジメント・バイアウトが盛んになったといわれている。また、近年では、DTIがさらなる財政的援助の緩和を勧告している。
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