研究課題
基盤研究(C)
本研究は、婚姻家族の紛争の円滑な解決の鍵となる家庭裁判所の「後見性」に焦点をあて、人事訴訟法によって導入された、離婚をはじめとする人事訴訟の家庭裁判所への移管、自庁処理制度による調停と訴訟の連携という手続き上の改正を実効性あるものとするために必要な法の整備について考察するものである。2003年の人事訴訟法による改革では、従来から家庭裁判所に備わっている審判・調停や家庭裁判所調査官制度を念頭に置いた後見的機能を前提とし、手続面において、人事訴訟でのその活用を可能とすることをねらいとしていた。しかし、かつては「社会的良識」を反映した家庭裁判所の運用が、離婚や子の監護等の家庭内の紛争への健全な解決策提示のために第一義的に有効であったとしても、価値観が多様化し、専門的法律知識を含めた情報収集手段の発達した現代において、人間関係調整的側面での後見的機能にのみ円滑な解決を期待することには限界があることが、近年特に、家事調停実務の現場でも認識されている。本研究は、わが国でのこのような問題解決の手がかりとして、アメリカとドイツの家事事件処理における「後見性」につき検討するものである。アメリカでは、1990年代以降、破綻した家族の関係修復のための機関として家庭裁判所が注目されてきた。しかし、一方で、子の最善の利益を実現するための最終的判断者として、国家の介入を必要視する考え方も根強い。他方、ドイツでは、従来から、精緻な実体法、手続法のもとで後見的役割を意図してきた家庭裁判所の機能向上と人的資源の整備をねらいとして、家庭裁判所手続き・非訟事件手続きの改正が予定されている。本研究者は、家庭紛争に対する「後見性」のあり方について示唆に富むアメリカ、ドイツのこれらの動向を引き続き検討し、わが国での問題解決に資したいと考えている。
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法学セミナー増刊 速報判例解説 2号
ページ: 105-108
2 Sokuho-hanrei-kaisetsu(Legal Seminar Journal, the extra edition)
民商法雑誌 135巻6号
ページ: 226-244
135-6 Minshoho Journal