(1)本年度の研究実績は、詐害行為取消権の法的構成に関する解説と、民事再生手続中における詐害行為取消訴訟の提起の可否に関する判例評釈である。いずれも詐害行為取消権に関するものである。前者は、私見である訴権説の立場から、詐害行為取消権の効果に関する一般理論を概説的に述べたものである。判例理論である「相対的取消」理論的欠点を指摘するとともに、その欠陥を埋めることのできるような解釈論を掲示することができたと考えている。 (2)後者は、民事再生法と詐害行為取消訴訟の関係を、具体的な事件に即して考察した判例評釈である。ここにおいても詐害行為取消権の訴権たる性質(実体法上の権利と訴訟法上の権利とが融合した権利)を論証することができ、具体的な判決の中において、私見の理論的正当性を論証することができたと考えている。 (3)債権者代位権に関する研究は、現在の日本の代位権を「一般的直接請求権」として考察し直すべきであるという試論に到達することはできたが、上記の権利の具体的内容(要件・効果)に関しては、未だ発表するに足りる成果を得ることができなかった。平成20年度の研究において、債権者代位権の判例研究とともに、上記の研究の完成を期することにしたいと考えている。それと同時に、本研究の最終目的である「共同担保法」の一般理論の提示につなげたいと考えている。
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