「研究の目的」--わが国の債権者代位権制度及び詐害行為取消権制度が、一般債権者にとっては、彼らのための「共同担保」に対する個別的執行方法であり、それが民法上の執行制度である点を明示することが本年度の研究目的であった。そのため債権者代位権および詐害行為取消権の双方にわたり、上記の点についての理論的な研究を進めることが目的であった。その目的は下記の「研究実施計画」にそって進められ、以下のような成果を得ることができた。 「研究実施計画」--ドイツ法に関しては、ドイツ破産外取消法の改正以降のドイツの学説・判例の展開を検討し、債権説(通説)・責任説・物権的相対的無効説・その他の学説がたどった軌跡を明確に描き出すことに努めた。その理由は1999年にドイツ破産外取消法が改正され、その帰結が注目されていたのであるが、改正の結果は従来の「債権説」を維持し執行認容訴訟による債権者取消権の行使をより強く肯定するという方向であることが明らかとなったからである。この研究成果は、--時間の都合により未だ公表してはいないが--「訴権説」という立場をとる私見にとって大きな比較法的支持を与えてくれる発見であるといってよい。これを手がかりに私見の理論的補強を今後も続けたいと考えている。
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