研究概要 |
研究実施計画に示した、(1)イングランド法における浮動担保の裁判例の動向の追跡と、法律委員会(Law Commission)の2005年8月のレポート(Law Commission,The Company Security Regulations 2006)に対する反応の検討、および、(2)最判平成18年7月20日民集60巻6号2499頁が示した「通常の営業の範囲内の処分」に関して検討すること、の以上3点について立命館法学315号に論文を公表した。 この論文において、イングランド浮動担保における個別担保と浮動担保の区別、および「通常の営業の範囲」についての具体的判断基準、さらに、いったん浮動担保が結晶化(固定化)した後、再度流動性を回復する場合の設定者の処分権限の根拠等について詳論し、その検討を基礎として、日本法の流動動産譲渡担保における「通常の営業の範囲内の処分」についてさらに検討を行った。その結果、集合物論・分析論のどちらを採ろうとも、流動集合動産の「再流動化」を理論づけるためには、今までの議論では不十分であることを明らかにした。さらに、担保目的財産の性質自体によって、「通常の営業の範囲」の概念が異なることが検証された。以上により、「通常の営業の範囲」については、担保設定当事者間の具体的な意思によらないで当然に処分が認められる類型と、まさに「当事者が欲したから」という明示の処分権の付与による場合とがあることを、明らかにすることができた。 他方で、判例評論における判例評釈において、キャッシュフローファイナンスに書かすことのできないインフラである債権譲渡登記に関する裁判例(東京高判平成18年6月28日)について検討した。債権譲渡人と譲渡債権の債務者を逆さまに登記したという登記事項の記載ミスにより、債権譲渡登記の対抗要件としての効力自体が否定された、という事例である。
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